コンサルタント対談「東西の保健師ニーズ」
プロフィール
大学卒業後、アパレルでの接客、店長経験を経て、2016年にアポプラスステーション(現アポプラスキャリア)入社。産業保健グループに所属し営業コンサルタントに従事し大手企業から年間100件以上の採用相談を受け各企業に合わせた採用課題のソリューションを提供。また産業保健領域希望の保健師の方々とは年間200名以上面談し、面接対策から入社までのトータルサポートには数多くの求職者様からの定評がある。アポプラスのコーポレートスローガン「いのちの現場の、力になりたい」にあるように企業様、求職者様からの「ありがとう」を励みに日々精進している。
看護助手として病院勤務の後「直に患者さんに関わりたい」という強い思いから看護専門学校へ入学し正看護師資格取得。卒業後、総合病院脳外科での看護師勤務を経て、2010年にアポプラスステーション(現アポプラスキャリア)入社。産業保健領域を希望される求職者の方々へのヒアリング能力は高く、その随所から企業へのアピールポイントを探し出し成約へと導くスキルに長けている。また自身の看護師経験から当職種出身者である求職者の方々への細やかなサポートは評判が高く、「自分の目で見た情報」を提供し続けている。
産業保健師のニーズは今後ますます高まっていく
―産業保健師専門のコンサルタントとして、日々どんな求人ニーズ、求職者ニーズに対応していますか?
- 白井:求職者で多いのは、「今は看護師をしているけれど、いずれは企業の産業保健師として働きたい」というニーズです。保健師の資格を持っている方にとって、企業勤務は労働環境面で魅力的。病院やクリニックは、日勤・夜勤があり休みもシフト制、体力的にハードです。資格や経験を生かして長く働くことを考えた際、産業保健師の道を目指す気持ちには共感できます。
- 西村:そうですね。企業側の視点で言うと、働き方改革が叫ばれる今、“健康経営”がキーワードになっています。これからの企業の発展にとって従業員の健康こそ大事だという時代がまさにきているため産業医と従業員との橋渡し役である「産業保健師」を社内に置きたい、というニーズはこれからさらに高まっていくでしょう。その成長マーケットを見据えて、産業保健師として今からキャリアを積んでいきたいという方も非常に増えています。従業員のフィジカル、メンタル面の疾病を予防する重要性は、社会全体で求められ、日々高まっていると感じます。
- 白井:まさにそうですね。産業保健師はこれまで従業員1,000人に対し一人配置が一般的でした。ただ、医療行為を行う産業医と違い「必ず採用しなければいけない」というルールがないので、採用していない企業も少なからずありました。それが、ここ2年くらいですでに(産業保健師が)いたところは増員し、入っていなかった企業は導入する傾向が高まっていますね。社員500人に対して一人置く、というケースも増えています。
- 西村:いまや、従業員のメンタルヘルスケアは企業の死活問題ですからね。
看護師経験を生かし、求職者の思いに共感する
―白井さんはご自身も看護師だった経験を、コンサルタントとしてどう生かしていますか?
- 白井:現場の話ができますし、看護師さんの悩みが理解できるという強みはあるかもしれません。私は、一度、看護助手として病院に就職した後に「直に患者さんに関わりたい」と考え看護専門学校に入り直したんです。学生時代の2年間、数多くの試験を受けながら緊張感のある命の現場で大変な実習期間を過ごし必死で資格を取って病院に勤めたら、さらに厳しい職場環境が待っていました。ミスが許されない現場で、先輩の指導も厳しく、慣れない不規則勤務に心も折れかけて…。だから、看護師さんたちの大変さに共感できるんです。
- 西村:医療の世界を目指してきた方は「患者さんにこういう思いで接したい」という理想を持っている方が多いですよね。でも、ハードな勤務などで、自分が思い描いていたようにできないもどかしさを感じることが多い。
- 白井:そうなんです。その部分は僕自身も経験しているんで「こんな風に大変でしょう」と話をします。すると「その通りです!どうしてわかるんですか!」という反応が返ってきて、求職者の方との距離がぐっと縮まるんです。
- 西村:なるほど。ぶっちゃけトークができるというのは強みですね。
- 白井:そうですね。最初の面談で、「産業保健師にキャリアチェンジしたい」と相談を受けて話を聞いていくと、「必ずしも産業保健師じゃなくてもいいのでは?」と判明することがあります。そんな時は、「今の環境のこういう点が不満なんですよね? そこを払拭できたら、保健師という道ではなくてもいいのではないでしょうか」と正直に伝えます。たとえば「産業保健ではございませんが、日勤で土日休みの良い求人がありますよ」と紹介し、実際に転職したケースもありましたね。
- 西村:それは分かります。要望をすべて聞いた上で、頑なに「産業保健師になりたい」という意思があり、話に一貫性があればもちろん紹介しますしね。僕は、まったくの異業種からコンサルタントになったので、「保健師とは」を知るためにまず現場で働く保健師さんからひたすら話を聞きました。求職者の方とは必ず3回はお会いし人となりに触れ、その方が満足する転職が果たせるよう、自分が保健師さんから直接聞いた業務内容や働き方、求められる人材像について伝えていき、関係を構築していきましたね。
- 白井:そうそう。当社のコンサルタントは、初回面談から始まって、求める条件のすり合わせ、面接対策の打ち合わせなどで2~3回は求職者と会いますよね。本人が意識していなかった別のキャリアの道を示すことができるのも、しっかりお会いし話を引き出しているからこそだと思います。
求職者の思いを代弁し、超難関の未経験者紹介を成功させた
―これまで担当した求職者の方の中で、印象的な事例を教えてください。
- 白井:20代前半の女性で、新卒で病院に就職した1カ月後に辞めてしまった方がいました。「1カ月で退職」という情報だけだと、「どこに行ってもすぐ辞めてしまう」というイメージがどうしてもついてしまいます。でも、初面談で話を聞き「その職場は辞めて当然だ」と納得できる理由がありました。彼女自身、医療の現場で活躍したいという強い思いがあり、とても明るくポジティブな方で、「この方が産業保健師だったら、従業員の方も安心していろんな相談ができるだろう」と思わせる人柄でした。そこで、「任せてください、何とかしましょう」と彼女に言い切り、企業側に全力で交渉。当初は「うちでも続かないよ」と難色を示されましたが、彼女が辞めた経緯、産業保健師として活躍が期待できる理由を理詰めで説明し、無事内定をいただくことができました。その方とは面接まで3回お会いしたほかにも、不安感を払拭しご自身の転職に自身を持って挑んでいただくため電話でも何度も連絡をとりながら関係を構築しましたね。
- 西村:それはすごいですよ。未経験で保健師として採用されるのがそもそも難しいのに。白井さんは求職者の方と接する上で、意識していることはありますか?
- 白井:うーん。僕、基本的に気合と根性で乗り切るタイプなんです(笑)。ただ、求職者100人いたら、100通りの思いがある。そこは尊重したいと常に思っています。転職のサポートをお願いしに来た方々に対して「任せてください」と言えなければ失礼ですからね。西村さんはどうですか?
- 西村:いいスタンスですね。僕が印象的だったのは、50代経験者の転職事例でした。産業保健業務は特殊で採用人数も少ないので、1人の採用枠に20人以上が応募することもあるという超買い手市場です。企業様から「落ち着いた雰囲気の経験者の方を」という求人が出たタイミングで「御社のご要望を満たせるこんな経験者がいます」と紹介し採用まで至るのが難しい中、想定していた年収より100万円近く高い条件で採用が決まったことがありました。
- 白井:それはすごい!
- 西村:経験者は複数企業を併願することが多く企業様もそれは重々ご承知なのですが、その方は「この1社に絞ります」と面接で言い切り、企業様もそのひと言に信頼を寄せてくれました。また人事ご担当者と密にコミュニケーションを取っていましたので面接の後はすぐに連絡を取りご本人からの感想をすぐに伝えるなど、スピード感も大事にしました。
無事内定をいただき求職者の方にお電話でそれをお伝えしたところ「西村さんのおかげです」と電話越しで泣いて喜んでいただき、本当に嬉しかったですね。
求職者の潜在価値を、顕在化させるのが私たちの仕事
―コンサルタントに相談するからこそのメリットはどんなところにあると思いますか?
- 白井:自己応募では分からない事前情報をキャッチできることですね。勤務形態や実際の職場の雰囲気、お休みがどれくらい取れるかなども、僕らが企業様との間に入ることで、リアルな情報を伝えられます。
- 西村:選考においても、面接のコツ、採用担当者のお人柄などを事前に伝えられますよね。
- 白井:そうです。産業保健師の場合、大手企業への就職が多いので、条件面の交渉はなかなか柔軟にできません。ただ、私たちが独自にキャッチした豊富な情報をしっかりとお伝えし、企業様、求職者様とも入社後のミスマッチがないようにしています。
- 西村:企業様のニーズとしては「ビジネスマインドを持った経験者」が圧倒的に多いのですが、「未経験者でもこんな強みがある方なので一度お会いしませんか」と、選考のフェーズに乗せてもらうところに、僕らの介在価値があると思っています。
未経験者の場合、職務経歴書だけ見ると「病棟での看護師経験だけでは難しい」となりがちです。そこでスキル面、マインド面からのその方なりの長所をお伝えしていくのです。例えばスキル面では健康診断後のフォローや人間ドッグの対応など保健師がカバーする内容に近い経験、マインド面では「多くの患者さんを見てきたからこそ予防に力を入れたいという思いが強い」「何故企業にとって産業保健が必要か、病棟経験からご自身なりの考えを導き出している」など、何回もお会いしたからこそわかるその方なりの人物像を伝えることで、企業様にも魅力のある求職者だと思っていただけるよう話を進めていきます。 - 白井:あとは、未経験者の方が長く勤めるケースが多いことをデータでお伝えすることもありますね。何度も言ってしまいますが未経験者の採用は想像を超える狭き門なので、まず応募をさせてもらうことが第一関門です。未経験でも話に一貫性があり産業保健への思いが非常に強い方へはそれが叶うよう最大限のサポートをさせていただくのが私たちの仕事です。
だからこそ無事採用に至ったときは、求職者の方と心の底から喜び合えるのだと思います。
- 西村:本当にそうです。先々、保健師を導入する企業が増え買い手市場から売り手市場へ、つまり、保健師の人手不足になる可能性が十分あります。企業様から保健師を増員したいというリクエストをいただいた際には「既に経験者がいるなら、未経験者を採用し育てる環境があるのでは」と提案し、産業保健未経験の方へもチャンスを広げていきたいですね。