【保健師】仕事内容・役割産業保健師の保健面談とは?目的や進め方を紹介
公開日:2023年11月28日
更新日:2025年06月25日

こんにちは、保健師転職のアポプラス保健師ライターチームです。
「産業保健師の保健面談がどのようなものなのかよくわからない......」
「効果的な保健面談の進め方や注意すべきポイントを知りたい!」
「自分のスキルが保健面談に役立つのか不安を感じている」
このような悩みを持つ人のために、保健師転職のアポプラス保健師ライターチームが疑問を解決する記事を執筆しました。
産業保健師の保健面談は、心身の不調を早期に発見し、病気を予防するうえで重要な役割を担っています。面談が実施される場面は多岐にわたり、それぞれに応じた対応力が求められるため、産業保健師には幅広いスキルや知識が必要です。
本記事では、保健面談の基本的な内容から、効果的な進め方、求められるスキルや知識を解説し、よくある質問にも回答します。
この記事を読むことで、産業保健師の保健面談の全体像がつかめるだけでなく、実際の面談で使える具体的なノウハウやスキルを知ることが可能です。その結果、自信を持って保健面談を進められるようになり、必要なスキルも身につけられるようになります。
目次
- ・保健面談とは
- ・産業保健師の面談業務
- ・効果的な保健面談の進め方
- ・産業保健師が保健面談で求められるスキルと知識
- ・産業保健師としてのキャリア形成
- ・保健面談に関するよくある質問
- ・まとめ|産業保健師による面談の目的や進め方を理解しよう
保健面談とは

保健師は、地域住民や企業に勤める従業員の疾病予防に携わり、健康維持・増進に寄与する専門職です。保健師が行う業務は、勤務先によってさまざまですが、産業保健師の業務の1つに保健面談があります。
保健面談とは、従業員の健康状態や労働環境を把握し、病気予防や心身の健康維持・増進を図ることを目的に行われる面談です。産業保健師が在籍する企業では、産業医や保健師が従業員と面談を実施します。
面談では、健康診断やストレスチェックの結果を基に、アドバイスをしたり医療機関を紹介したりします。心身の健康状態や生活習慣に関する聞き取りも面談時に行うため、従業員との信頼関係構築や健康問題の早期発見に重要な役割を担うのが保健面談です。
産業保健師の面談業務

保健面談は、さまざまな内容があり、重要な役割を果たしています。
保健面談の目的と重要性
従業員の病気を予防し、健康維持・増進を図るためには、心身の不調を早期に発見し、適切な対応を取ることが重要です。その中で、保健面談は大きな役割を担っています。
保健面談は、産業医によって実施される場合もありますが、多くは法律に基づいて行われています。主な対象者は、以下の通りです。
- 長時間労働者
- ストレスチェックにより「高ストレス者」と判定された従業員
一方、産業保健師による面談は、より柔軟で幅広い内容に対応できるのが特徴です。また、産業医と比べると、保健師は打ち解けやすい存在でもあります。
そのため、保健師による面談は、心身の不調の早期発見や、病気予防に重要な役割を担っているのです。
産業保健師が行う主な面談の種類
産業保健師が実施する主な面談の種類は、次のようなものがあります。
- 健康診断の結果に基づいた面談
- ストレスチェックの結果に基づいた面談
- 長時間労働者との面談
- 心身の健康相談
- 休職者や復職者支援の面談
このような面談を通して、従業員の健康状態や労働環境を把握し、アドバイスすることは、病気予防や、心身の健康維持・増進に寄与します。
効果的な保健面談の進め方

ここでは効果的な保健面談の進め方を、事前準備から、面談後の記録やフォローアップまで紹介します。
面談前の準備と情報収集
効果的な面談を実施するためには、事前の準備が重要です。特に面談の場所と面談対象者に関する情報の確認は欠かせません。
■面談に適した場所を確保する
面談はプライベートな話が出ることもあるため、他の従業員の目が気にならず、落ち着いて話せる環境を選びましょう。会議室や相談室など、情報漏洩しにくく静かな空間がおすすめです。
■事前に収集しておきたい情報
- 氏名、年齢、所属部署、職種や役職
- ストレスチェックの結果
- 健康診断の結果
- 労働環境や人間関係などの職場環境
これらの情報を把握しておくことで、対象者の状況を正確に理解しやすくなり、適切な支援やアドバイスができる面談につながります。
■具体的な質問例
健康状態や労働状況を掘り下げるために、下記の質問例を参考にしてみてください。
- 睡眠時間はどれくらい取れていますか?
- 最近、体のどこかに痛みや不調を感じていますか?
- 現在の業務で、特に負担に感じていることはありますか?
- 仕事による体調の変化はありますか?
事前に収集した情報を基に、面談時にどんな質問を投げかけるかをイメージしておくと、より効果的な面談ができます。
信頼関係を築くコミュニケーション技法
保健面談では、信頼関係の構築が何より重要です。そのためには、以下のような姿勢を心掛けましょう。
・傾聴する姿勢を大切にする
面談対象者の話にしっかり耳を傾け、うなずきや相槌を交えて共感を示すことで、相手が安心して話せる雰囲気をつくることができます。話の内容を否定せず、肯定的な関わり方を意識することで、信頼関係の構築にもつながります。
・相手の感情やニーズを理解する
面談対象者の置かれている状況や感情、どんな支援を求めているかを丁寧に汲み取り、ニーズに応じた受け答えをすることも、関係を築くためには欠かせません。
・わかりやすい言葉で伝える
必要な情報提供や説明の際には、専門用語を多用せず、わかりやすく伝えることも大切です。相手の理解度に合わせて説明の仕方を工夫しましょう。
面談中の注意点と対応策
産業保健師による面談は、個人情報の保護や、面談内容の秘密厳守に十分注意して実施する必要があります。そのためには、適切な場所を選ぶことが重要です。
面談中に使用する資料が他の人に見えたり、会話が周囲に聞こえたりする場所は、避けなければなりません。また、オンラインで実施する場合も同様に、他の人が周りにいない場所で行うなど情報が漏れないような配慮が必要です。
面談対象者が安心して話せるよう、プライバシーが確保された場所を事前に準備しておきましょう。
面談後のフォローアップと記録の取り方
面談後のフォローアップや、面談記録の正確な記述は、保健師が継続して効果的に関わるための重要な役割を担います。
面談後のフォローアップには、次のようなことがあります。
- 生活習慣指導
- メンタルヘルスケア
- 労働環境改善
- 医療機関紹介
- 定期面談
記録は、次のような内容を、詳しく正確に記述する必要があります。
- 基本事項(面談日時、場所)
- 面談の目的
- 知り得た情報(家族、生活、健康、思考や心身の状態などに関すること)
- 支援内容
- 相談者の反応
- 保健師視点からの分析・解釈
- 今後の支援計画
産業保健師が保健面談で求められるスキルと知識

産業保健師が実施する保健面談には、さまざまなスキルが求められますが、ここでは重要な5つのスキルを紹介します。
コーチングとカウンセリングの基本
産業保健師による面談は、コーチングやカウンセリングなどの技術を組み合わせることで効果的に実施できます。
コーチングは、目標達成や課題解決のために、自主的な行動を引き出す技術です。具体的には、生活習慣を改善したい人に対して「生活習慣を変えるために最初に取り組めることはありますか?」と、自分の意思で選択して必要な行動を取るように促します。
それに対してカウンセリングは、悩みや心理的な課題を持つ人を、専門的に支援する技術です。たとえば、病気を予防するために生活習慣の改善が必要な場合はコーチング技術、悩みやストレスを抱えている場合はカウンセリング技術が求められます。
このように、コーチングやカウンセリングなどの技術を状況に応じて適切に用いることで、効果的な面談を実施できるのです。
職場環境や労働法に関する知識
保健面談には、職場環境や労働法に関する基本的な知識が求められます。労働法の知識があると、面談で法律を踏まえた適切な支援が可能です。
たとえばIT企業で働くAさんは、繁忙期に入ってから連日深夜まで残業を続けた結果、集中力の低下や不眠といった心身の不調を訴えるようになりました。しかし、月の残業時間は法律上の範囲内であったため、Aさんや企業は特に大きな問題であるとは考えていませんでした。
しかし、労働契約法によって従業員に対する安全配慮義務が企業には生じます。そのため、法律上認められている残業時間の範囲であっても、心身に悪影響が認められる場合には法令違反になる可能性があります。労働法の知識があれば、このような違反の状況にもいち早く気づけるため、従業員に対する迅速かつ適切な支援ができるようになるでしょう。
また、面談を通じて労働環境の改善が必要だと判断された場合にも、労働法の知識が役立ちます。労働法の知識があると、経営層や関係部署とスムーズに連携し、より効果的な職場環境の改善につなげられるのです。
メンタルヘルス対応のスキル
従業員のメンタルヘルス対応は、産業保健師の重要な役割です。特に、ストレスチェックで高ストレス者と判定された人や、メンタルヘルス不調を抱える人、復職支援の対象となる人との面談において、非常に重要なスキルといえます。
また、面談や日常の様子からメンタル不調の兆しを早期発見し、適切に関わるためにも、メンタルヘルスに対応するスキルは欠かせません。
産業保健師によるメンタルヘルスの取り組みについてより詳しく知りたい方は、下記の記事を参考にしてみてください。
現代社会に必須といわれるメンタルヘルスケアは、なぜこのように重要視されているのか?また産業保健師はどのように取り組んでいけばよいのか?考えていきたいと思います。
マネジメント力と調整力
産業保健師が面談を実施するにあたっては、マネジメント力と調整力も欠かせません。
マネジメント力は、下記の5つのスキルから成り立っています。
- 目標設定
- 進捗管理
- アセスメント(状況や性格などを適切に把握する力)
- コーチング
- テクニカル(業務遂行に必要な力)
保健面談の場面では、たとえばアセスメントスキルとして、聴取した情報や健康診断の結果を基に相手の状況を適切に把握します。
さらに、コーチングスキルや調整力も駆使して、相談者に合わせた目標設定や、進捗管理を行い、支援していくことが求められるのです。このように、相談者の目標達成を支援する力は、面談を効果的に進めるうえで重要な役割を担います。
問題解決力
産業保健師は、従業員の健康課題が見つかった際に、相談者とともに問題を解決していく力が求められます。また従業員それぞれの問題を解決するだけでなく、労働環境に課題が見つかった場合は、企業の体制改善に取り組む場面もあります。企業の体制を改善するためには、経営層や産業医、関係部署との連携が欠かせません。
そのためには、次のような力が役立ちます。
- 課題の本質を捉えるスキル
- ロジカルにわかりやすく説明するスキル
- 状況の変化を敏感に察知するスキル
- 適応力
- 継続力
産業保健師としてのキャリア形成

産業保健師としてのキャリア形成では、やりがいや成長を感じながら、無理なく長く働ける環境を選択することが大切です。目指すキャリアを意識して、取るべき資格や受けるべき研修を選びましょう。
面談業務のやりがいと成長ポイント
産業保健師として、面談や支援に関わった従業員が、健康的に働く姿を見ることにやりがいを感じている保健師がいます。
産業保健師は、幅広い年代の従業員と円滑なコミュニケーションを図るために、常に情報収集を行う必要があります。こういった多様な情報に触れる機会が、自身の視野を広げ、専門職としての成長を実感できるポイントだと感じる保健師もいるでしょう。
しかし産業保健師は企業で1人しかいないケースも多く、面談業務でプレッシャーを感じる場合も多くあります。たとえば、メンタルヘルスに支障をきたした従業員との面談を行なう中で、責任を強く感じすぎて自身のメンタルヘルスを崩してしまう場合です。
「自分だけでなんとかしなければ」と感じてしまい、周囲に相談もできず、適切な対応が取れなくなってしまうケースはめずらしくありません。しかしそのような時に、職場の仲間から「あなたは一人じゃない。頼れる専門家はたくさんいるよ。」と声をかけてもらって救われたと話す産業保健師もいます。
積極的に声を挙げて周りを巻き込んで、チームとして対応していく意識を持つことで、よりきめ細やかな面談が実現できるため大きなやりがいにもつながります。産業保健師のやりがいや成長できるポイントを踏まえて、自分のキャリア形成を考えるようにしてみてください。
キャリアアップに必要な資格や研修
産業保健師が、資格を取得したり、研修で学びを深めたりすることは、自身のキャリアアップにつながります。
保健面談に役立つ資格としては「産業カウンセラー」や「メンタルヘルス・マネジメント検定」「健康経営アドバイザー」などがあります。その他「第一種衛生管理者」や「労働衛生コンサルタント」も、産業保健師の業務に役立つ資格です。
また、以下の組織は保健師向けの研修を開催しています。
- 全国保健師教育機関協議会
- 日本看護協会
- 日本産業保健師会
大手企業の転職について興味がある方は、アポプラス保健師の求人を一度チェックしてみてください。どういった資格や研修を選ぶかは、職場のニーズや、自身の今後のキャリアアップを考慮して選ぶとよいでしょう。
なお、保健師の研修についてより詳しく知りたい方は、下記の記事も参考にしてみてください。
こちらの記事では保健師に必要な研修や便利なスキルについて解説します。
保健面談に関するよくある質問

ここからは、保健面談に関するよくある質問に回答します。
特定保健指導と保健指導はどのような内容ですか?
特定保健指導と保健指導の違いは、主に対象者と目的に違いがあります。
特定保健指導は、メタボ判定やそのリスクがある人に対し、生活習慣改善を支援する指導で、保健師などの専門職が実施します。
支援は「動機付け支援」と「積極的支援」に分かれ、対象者の状態に応じて行われます。
特定保健指導の目的と背景
特定保健指導は、特定健康診査の結果をもとに、メタボと判定された人、またはその予備群を対象に実施されます。目的は、生活習慣病の発症リスクを低減し、健康寿命を延ばすことにあります。保健師や管理栄養士、医師といった専門職が支援を担当します。2つの支援パターン
-
①動機付け支援
対象者が生活習慣病のリスクに気づき、自発的に改善に取り組むためのきっかけを提供する支援です。- 個別またはグループ面談で、健康状態や生活習慣を振り返る
- 本人の希望や現状に合った行動目標を設定
- 3〜6カ月後に、電話やメールで取り組みの継続状況を確認し、効果を評価
-
②積極的支援
動機付け支援の内容に加え、定期的・継続的にサポートを行う支援です。- 面談に加え、3か月以上にわたる電話やメールによるフォローアップ
- 習慣定着を促すための個別的なアプローチ
- 最終的に生活習慣の変化と健康改善の効果を評価
一方、保健指導の対象者は、限定されていません。健康維持・増進、病気予防を目的として、健康診断の結果に基づき、次のような内容について指導します。
- 生活習慣改善のアドバイス(栄養指導、生活指導、運動指導)
- ストレスマネジメントのアドバイス
- 健康診断の結果に基づいた疾病リスクと予防策
どんな時に産業保健師による保健面談が行われますか?
産業保健師による保健面談の内容はさまざまですが、次のような時に行われます。
- 健康診断の結果に異常所見があった場合
- ストレスチェックで高ストレス者と判定された場合
- 長時間労働が続いている場合
- 心身の不調を訴えた場合
- 休職や復職をする場合
面談時間はどのくらいが適切?
保健師による面談時間は、面談の目的や内容によって異なります。特定保健指導では、初回面接を個別で実施する場合は20分以上、グループで実施する場合は1グループ80分以上で行われます。
一方、その他の一般的な面談は、15〜40分程度が目安ですが、内容や相談者の状況によって変動するでしょう。
産業保健師による面談の目的や進め方を理解しよう

産業保健師による面談は、心身の不調を早期に発見し、病気を防ぐための重要な役割を担っています。健康診断やストレスチェックの結果に基づいた面談、長時間労働者や復職者との面談など、幅広い場面で実施されています。
そのため、産業保健師が面談を実施するにあたっては、多様なスキルや知識が必要です。たとえば、労働法に関する知識、コーチングやカウンセリング技術、メンタルヘルスへの対応力、マネジメント力、問題解決力などがあげられます。
保健面談に必要な資格を取得したり、研修で学びを深めたりすることは、キャリアアップにもつながります。
保健師としてのキャリア形成を考える時に大切なのは、条件だけで選ばないことです。人生設計に沿って、自分らしく、無理なく続けられる環境かどうかを見極めるようにしましょう。
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