【保健師】業界情報【研修レポート】ストレスチェックの結果を産業保健師はどう活かす?集団分析結果の活用例やポイントをレクチャー
公開日:2025年02月13日

こんにちは。保健師転職のアポプラス保健師ライターチームです。アポプラス保健師では「輝く明日の私と仕事」と題して、2022年より『+Co 保健師 シャイン研修』を定期開催しています。
産業保健師がすぐに実践できる仕事のノウハウや、モチベーション作りのヒントなどをお伝えする本セミナー。2024年11月15日の開催では、弊社エグゼクティブアドバイザーとして活躍している久保さやかさんを講師にお迎えし、ストレスチェックの概要や集団分析結果の活用方法について、わかりやすく解説していただきました。
今回は、セミナーの概要をレポートでまとめています。ぜひ、職場環境の改善にお役立てください。
登壇者プロフィール

保健師・エグゼクティブアドバイザー 久保さやか
千葉県出身。慶応義塾大学看護医療学部を卒業したのち、看護師として就職。
その後、保健師、会社員、コンサルタントを経て、現在はフリーランスとして働く。
2023年からはエグゼクティブアドバイザーとして活躍中。
目次
- ・推進が期待されている、ストレスチェック制度の概要
- ・産業保健師の生の声|集団分析結果の活用度は?
- ・職場環境改善は誰が主導する?3つのパターンを紹介
- ・職場環境改善へ向けた産業保健師の取り組み例
- ・ビジネススキルを磨いてPDCAサイクルを回そう
- ・まとめ|職場環境改善には幅広いスキルが必要!学び続ける姿勢が大切
推進が期待されている、ストレスチェック制度の概要

セミナーの冒頭では、ストレスチェック制度の概要と今後の展望について解説がありました。
労働安全衛生法に基づき、2015年12月から労働者が50名以上の事業所において、ストレスチェックの実施が義務づけられました。ストレスチェックとは、従業員の心理的な負担の程度を把握するための検査を指します。検査の結果、高ストレス者だと判明した従業員にアプローチし、面接指導を受けるよう促すことが義務となっています。
一方で、今回のセミナーのテーマでもあるストレスチェックの集団分析と、その結果をふまえて職場の環境を改善する取り組みは「努力義務」とされており、法的な義務には含まれていません。そのため、多くの事業所でストレスチェックが職場環境改善につながっていないという課題があります。
こうした背景の中で、2024年11月1日に公表された「ストレスチェック制度等のメンタルヘルス対策に関する検討会 中間とりまとめ」では、集団分析の結果を活用した職場環境改善を推進するため、適切な取り組みの普及が必要であるとの方向性が示されました。
このことから、今後は集団分析と職場環境改善に向けた取り組みが制度的に強化され、推進されていく可能性が高い と考えられます。
参考:
厚生労働省「職場における心の健康づくり 〜労働者の心の健康の保持増進のたの指針〜」
厚生労働省「ストレスチェック制度等のメンタルヘルス対策に関する討会 中間とりまとめ」
産業保健師の生の声|集団分析結果の活用度は?

多くの事業所がストレスチェックを職場環境改善に活用できていないという課題を抱える中で、本セミナーに参加した23名の産業保健師は集団分析結果をどの程度活用できているのか、事前に実施したアンケートの結果も紹介されました。
アンケートでは、 「部分的に活用している」「活用していない」が全体の70%以上を占めるという結果に 。セミナーに参加した産業保健師にヒアリングする中で、以下のようなお悩みを抱えていることが明らかになりました。
- 経験年数が浅く、会社がどのようにストレスチェックの結果を活用しているのかわからない
- 内容は確認しているが、具体的なアクションにはいたっていない
- データを利用してどのようにアプローチしたらいいのかがわからない
対して、「活用している」と回答した参加者は、次のような工夫をされています。
- 所属長を集めて、ストレスチェックの結果の見方や職場環境の見直しについてワークショップを実施したところ、具体的な改善策を所属長自ら考えるようになった
- 結果がよい部署と悪い部署を比較して、改善案を検討した
また、「今後どのような取り組みをしていきたいか」という質問には、次のような回答が得られました。
- 部署ごとの課題など、詳細分析ができるようになりたい
- 健康経営に役立てられるように、分析力や提案力を身につけたい
- 組織へのアプローチを検討していきたい
- ストレスチェックを実施しただけにしないように、工夫していきたい
中には、ストレスチェックの集団分析結果を用い、職場環境改善を進めている方もいることがわかりました。一方で、 ストレスチェックは比較的新しい施策であるため、まだどのように活用すればよいのかわからないと悩む産業保健師も多い ようです。
職場環境改善は誰が主導する?3つのパターンを紹介

アンケートの結果によると、セミナー参加者23名のうち、ストレスチェックの集団分析結果を「活用している」と回答したのはわずか4名でした。この結果を受け、セミナーでは具体的にどのように職場環境改善に取り組めばよいかについて、解説がおこなわれました。
職場環境改善に取り組む方法は、立案を誰が中心となっておこなうかで分類できます。具体的には、 経営層主導型・管理監督者主導型・従業員参加型の3つのパターン があげられます。
経営層主導型 | 管理監督者主導型 | 従業員参加型 | |
---|---|---|---|
特徴 | 経営層が会社全体として対策を進める方法 | 管理監督者(部署の部長や課長)が対策を進める方法 | 従業員が対策の立案に主体的に参加する方法 |
向いている職場 | 課題が明確であり、方針を適切に指示できる場合 |
|
問題をみんなで解決しようとする雰囲気がある場合 |
メリット | 企業全体として取り組みが必要な場合に効果的である | 部署ごとの特性に応じた対策ができる |
|
デメリット | 部署ごとの特性を考慮しにくい | 管理監督者の権限を越えた対策はできない |
|
どのパターンが職場環境改善の取り組みとして最適なのかは、企業の特徴やストレスチェック制度への関心の高さなどによって異なります。 いずれのパターンでも、Plan(計画)・Do(実施)・Check(評価)・Act(見直し)のPDCAサイクルをベースにおこなうことが重要 です。
職場環境改善へ向けた産業保健師の取り組み例

セミナーでは、ストレスチェックを職場環境改善につなげるための産業保健師の取り組み例が3つ紹介されました。ぜひ、参考にしてみてください。
取り組み例1「ラインケア研修にストレスチェックの内容を組み合わせた」
ストレスチェックの業者やフォーマットの変更をきっかけに、ラインケア研修の一環としてストレスチェックの集団分析結果の報告会をおこないました。
従業員に産業医と産業保健師のことを知ってもらうきっかけになり、認知度があがったという効果が得られています。また、従業員が休業した際の人事的なルールが不明瞭だったことに対し、明確にして共有できるようになったことも効果として得られました。
取り組み例2「管理職インタビューを実施した」
ストレスチェックの結果が悪かった部署、よかった部署の部長やマネージャーにそれぞれインタビューを実施。
ストレスチェックの集団分析結果を説明したうえで感想を聞き、管理職の認識について確認しました。良好な部署と比較することで悪かった部署の課題が明確になり、改善に取り組めました。たとえば、休業者の対応や連携が早くなったという効果が得られています。
管理職インタビューのポイントは、職場環境が悪いと責めるのではなく、あくまでヒアリングに徹することです。話を聞いたあとは、コーチングを取り入れるとより効果的です。
取り組み例3「チーム内で集団分析結果を読み解いた」
ストレスチェックの集団分析結果をチーム内で共有し、従業員みんなで話し合って、挨拶をするなどの日々実践できる内容をポイントに職場環境改善への行動計画を立てました。
1カ月後に再度話し合いの時間を設けて振り返りをしてみると、行動計画が実施できており、職場環境改善に向けた手ごたえを感じました。管理職や総務部から高く評価してもらったり、数値的な効果が出たりしています。
ビジネススキルを磨いてPDCAサイクルを回そう

ここからは、実際にストレスチェックの結果を職場環境の改善にどうつなげるべきかを解説します。
職場環境改善にはPDCAサイクルが重要
ストレスチェックを実施する際は、PDCAサイクルに沿って進めていくと効果的です。PDCAサイクルとは、【Plan:計画】【Do:実施】【Check:評価】【Act:見直し】の頭文字を用いた言葉であり、業務改善や目標達成のために使われるフレームワークを指します。
以下の図は、PDCAサイクルを用いたストレスチェックの実施の流れや、どのように職場環境改善へつなげていくかを示しています。

産業保健師には、予防医学や公衆衛生学にかかわる専門的な知識が必要ですが、 専門的な視点だけではうまくPDCAサイクルを回せません 。職場環境を改善するには、「ビジネススキル」や「ポータブルスキル」といった、どのような職業にも求められるスキルも身につけておくことが不可欠です。
ビジネススキル
ビジネススキルとは、仕事で成果を出すために必要な能力を指します。主なスキルの種類は次の通りです。
スキルの種類 | 概要 |
---|---|
情報収集能力 | 効率よく必要な情報を収集し、分析する能力 |
プレゼンテーション能力 | 自分の意見や提案を相手にわかりやすく伝える能力 |
ヒアリング力 | 相手の話を聞いて必要な情報を収集する能力 |
リーダーシップ | チームメンバーをまとめ、目標達成に向けて導く能力 |
産業保健師はストレスチェックを用いて得られた情報から職場環境の課題を明確化し、改善案を考えます。さまざまな従業員にヒアリングをして、情報を引き出すことも大切です。これらは、ビジネススキルの「情報収集能力」や「ヒアリング力」に該当します。
ポータブルスキル
ポータブルスキルとは、職種の専門性以外に、業種や職種が変わっても業務が遂行できるスキルを指します。
ポータブルスキルの具体例は、次の通りです。
スキルの例 | 概要 |
---|---|
現状の把握 | 取り組むべき課題を設定するために、情報収集や分析をおこなうスキル |
計画の立案 | 設定した課題を遂行するための具体的な計画を立てるスキル |
臨機応変な対応 | 予期せぬ状況に対応できるスキル |
人とのかかわり方 | 上司や関係部署、顧客などに対する納得感の強いコミュニケ-ションが図れるスキル。メンバーの育成や、性質を活かして業務を割り振るスキル |
まとめ|職場環境改善には幅広いスキルが必要!学び続ける姿勢が大切
本記事では、ストレスチェックの概要や集団分析結果の活用方法をテーマに、2024年11月に開催されたセミナーの概要をご紹介しました。
ストレスチェックの集団分析結果を活用して職場環境の改善につなげることは、産業保健師の重要な役割であり、今後その重要性はますます高まっていくものと見られます。一方で、多くの産業保健師がストレスチェックの結果を活用できていないという課題も浮き彫りになりました。
ストレスチェックの集団分析結果を活用するには、PDCAサイクルに基づいて職場の体制を整えることが重要です。そのためには、仕事をするうえで必要となるスキル全般に目を向けることが欠かせません。セミナーでは、自分に必要なスキルを見極め、学び続けることの重要性が強調されていました。
産業保健師としての転職を希望されている方は、アポプラス保健師を利用してみてください。専任のコンサルタントが求人の提案や面接対策、入社後支援などを一貫してサポートするため、安心して転職活動を進められます。
また、ご相談を受けたあとも定期的にフォローし、今回のセミナー開催のような取り組みなども含めて、継続して皆さまのライフプランにかかわっていきます。早い段階でも構いませんので、ぜひご相談ください。
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